風呂敷はたくさんの可能性を秘めています

よこやま いさお

横山 功

- 風呂敷 -

1979年、浅草生まれ。武蔵野美術大学卒。風呂敷に魅せられて以来、新たな包み方を日々開発しながら風呂敷のあるライフスタイルを提案する。また使い方を伝えるだけでなく、自ら風呂敷づくり(藍染め)も行う。特技はナンバ歩き。テレビ、ラジオ、雑誌などメディアへの出演や掲載も多数。

2013.4


風呂敷との出会いは?

 家の押入れに包装紙や紙袋がたくさんあって、なんとかならないかなって思ったんです。捨てずに使うことを考えたけどなかなかいい方法を思いつかなかった。じゃ、何なら捨てないだろうって考えて、布ならいいんじゃないかと。つまりそれが風呂敷だったんです。

 その後、おばあちゃんのタンスから風呂敷を探し出して旅に出かけました。そうしたらもう、こんなに便利なものはない!って思いましたね。

  僕は風呂敷で海外へ行ったこともありますが、バッグより安全かもしれません。たぶんプロのスリは手口が決まっていますが、外国人にしたら、風呂敷は見たこ ともなくて得体がしれない。だから手が出せない。それに盗んだ後も、あれを持って歩いてたら逆に目立っちゃいますから。

 よくエコバッグと比較されるけど、そうじゃないんですね。あくまで風呂敷の機能のひとつとしてバッグがあると捉えるべき。ただの四角い布が何にでも形を変えるんだって。

 

いつ頃から風呂敷はあったのですか?

 風呂敷という名前がついたのはおそらく室町時代だけど、こういう布の使い方は縄文時代からあったと思っていますもちろんその頃は名前さえなかったかもしれないけど。

  縄文時代にはロマンを感じます。この時代についてはまだわからないことも多いけど、階級や差別、争いのない社会だったといわれていますね。それに死も隣合 わせで、毎日がすごく生命感あふれていたに違いない。縄文土器や土偶は不思議な形をしているけど、命の喜びや響きを表現したらああなったんじゃないかな。 芸術家です。

 それから一万年も続いたこの時代が土台になって今の日本があるとも思う。その後日本には大陸からいろんな文化が入ってきたけど、それらを日本流にできたのもこの土台があったからだと思います。

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縄文時代にはどんな素材を使っていたんでしょうか?

  当時は麻でしょうね。綿を使うようになったのは江戸時代だと思います。日本では素材の良さを活かしながら、風土に合わせて形や染め、織りが工夫されていっ た。日本は湿気が多いから、形をつくると乾きにくくなって布が劣化しやすい。だから形は変えずに、そのまま使える方法を考えたんでしょう。風呂敷や着物が まさにそうです。

 そうなると大事なのは素材です。麻は夏涼しいし、重ねて着たら温かいですよ。僕は店で売っているものに着たいと思う服がないから、古い着物をほどいて作り直しています。あと、ふんどしね。それから帯をすると、からだの重心が下がるからいいんですよ。

 

からだの重心は低い方がいいんですか?

 そ うです。なぜなら、バランスを考えたらその方が安定するでしょ。幕末の志士の写真を見ると、小さいのにどっしりとしてますよね。なで肩で華奢なのに免許皆 伝の腕を持っていたり、大男を投げ飛ばしたり。カッコいいですよ。風呂敷を背負って歩くときも手で持つと効率が悪い。重心を意識して下半身を中心に荷物と 一体になるといい。

 重心はいわゆる血の集まるところ、つまりよく使うところに決まります。頭で考える人は頭、感情をよく使う人は胸のあたりっていう風に。僕は高校生のときから重心を考えるようになって、そのころは肩より上にあったんだけど今は足の裏です。

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重心を下げる秘訣は?

 「下げよう、下げよう」なんて頭で考えたら、逆に上がっちゃうからダメ。下半身を意識したり、実際に使ったりするといいんですだから帯を締めるのもいい。そうすると締められた部分が反発して筋肉がつくし、冷えからも守られる。

  僕は刃が一本しかない下駄を履いて京都へ旅行に行ったことがあるんだけど、坂道ばかりで油断すると転びそうになる。もう必死です。そのときに気づいたの が、何かに意識を向けていると頭で余計なことを考えられないから、悩みがなくなりますね。悩むにもエネルギーがいるから。人は食べすぎか余裕があるときに 悩むんだと気づきました。

 

からだのことを意識し始めたのはいつ頃ですか?

 実 は昔、歩いたり走ったりが苦手で、体育がずっと「1」だったんです。それで二十歳を過ぎてから楽な歩き方を探し始めて、お腹をひねらないようにしたり、 ヒョコヒョコ歩いたりしたら意外と歩きやすかった。それがナンバ歩きでした。あと、手をグーにすると力んでからだが固まるから、人差し指を伸ばすといい。 肩の力が抜けますよ。

 からだには生きていくための知恵や技が内包されています。みんな今の社会やシステムに合わせて生きているけど、からだは時代や社会が激変しても大丈夫なくらいの強さを持っているはずです人のからだはそんなに弱くない。人のからだが持つ可能性にはすごい魅力を感じます。

 

でも最近は元気のないも多いように思われますが

 世の中が混沌としているから、人は想いや祈りにいきやすい。でも今抱えている問題は、産業革命以来の目に見える科学によって起こっていることも多い。だから、掃除していない雑然とした部屋の中でいいアロマだけ焚くようなことになってしまう。

 何か大きなことをしようとするんじゃなくて、目の前のことをちゃんとやること。具体的に行動したり、カタチにすることが大事です。

 またトイレを我慢しながらじゃ次のことが考えられないように、今やるべきことをやらないと次は見えない。言い換えれば、一つひとつ淡々と進めると、次の道が見えてくるんだと思います。

 それから自分を大切にして、魂が喜ぶように身の回りを整えること自分のコンディションが良くないと、周りの人にも良くできません。だから傲慢になるんじゃなくて、いい感じにしておくのは大切です。

 

風呂敷は身の回りを整えるのに使えますね

 すごく便利だし、具体的で目に見えるからいいんです。もっと風呂敷が使われて欲しいですね。できれば小学校の必修科目にしたい。

 もしデザインが古臭くて気にいらないなら、自分の好きな布を買ってきて作ればいいんですよ。それから、ただ結び方を覚えるんじゃなくて、どんどん創造していって欲しいそれは非常時にも役立ちます。

 僕は最近、一枚布でできるリュックサックを考えついたけど、折り紙と一緒でレパートリーは想像以上です。

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 染めに使う藍

では、最後にひと言お願いします。

 うーん、すぐに思いつかないな。じゃあ、それを今の僕のラッキーアイテムから導き出してみましょうか。まず、白い、動物、冷たくない(体温)、魚ぽい、日本にいない(サイズ)…。

 結果的にはクジラでした。クジラは大きいから、そのメッセージは「人はすごいものだから、夢は大風呂敷で」。

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PDF版

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Q 小さい頃は何になりたかった?
生き物が好きで、ペットショップをやりたかった
Q いま一番欲しいものは?
田畑のできる 広い庭
Q これまでの人生で一番印象に残ったことは?
祖父の、底の見える隅田川で泳いでいたという話
Q 日本の好きなところ、嫌いなところは?
好き: 潜在的に自然が豊かなところ / 嫌い: 地域の特色が失われてきていること
Q 生まれ変わったら何になりたい?
蛙になって 田んぼを 冒険したい
Q 好きな言葉は?
全体は個人のために、個人は全体のために
参 考

http://members2.jcom.home.ne.jp/isamix/